製造承認申請時に求められる資料と安定性試験

〇製造承認申請時に求められる資料

①製造の品質規格に関する資料(規格、試験法)

②製造の安定に関する資料(加速試験)

③製剤の生物学的同等性に関する資料

ジェネリック医薬品の資料は、新規化合物を含有する新医薬品の場合に比べ少なく、特に患者を対象とした臨床データを求めておらず(健康成人を対象に生物学的同等性試験を実施しています)、製剤特性に関連した資料のみになりますが、これは世界共通です。

また、薬物、夾雑物の濃度に依存して生じる作用、効果に関しては、ジェネリック医薬品の臨床上の有効性、安全性が先発品と同一となる条件が医薬品に備わっているかを科学的、合理的に評価しています。この評価方法および規格基準は世界共通のもので、日本国だけが甘い基準で評価はしていません。

 

〇原薬・製剤を対象とした安定性試験

医薬品の有効性、安全性を維持する為に必要な品質が時間とともに変化する程度を試験します。これは安定性試験といい、成分(原薬)や成分を含む製剤を対象として、成分としての性質や化学的な変化、また製剤の物理的状態等の変化を検討します。これらの検討結果をもとに、医薬品を保存する方法(貯蔵方法)や有効期間を設定します。通常は、有効期間は3年とし、製造後3年間は医薬品に品質が基準以内に維持されることが要求されています。しかし、3年は維持できない場合には、貯蔵方法を特に設定する、あるいは有効期間を短く設定することになります。安定性を検討する試験には、長期保存試験、中間的試験、加速試験という試験条件が異なる3種類があります。

製剤に含まれる薬物の安定性は通常包装状態で試験を行います。これは長期保存試験といい、通常流通する条件での有効期間における安定性を実測値として示すことが目的です。試験条件は日本国の平均的気象条件としてはやや苛酷な条件です。

試験条件をさらに厳しくすることで、成分あるいは製剤特性の変化を加速させ、短期間での変化から通常保存条件での安定性を推定するのが加速試験です。一般的には、この条件で6ヵ月保存し、品質が基準以内に留まっていることが認められれば、通常の保存条件で3年間は安定であることを推定させると考えられています。加速試験で品質に変化が認められた場合、中間的試験によって6ヵ月間の安定性を試験します。

製剤の包装を解いた特殊な条件で安定性を検討することを過酷試験と呼びます。この試験結果は製造承認のための必要なデータとはなっていません。しかし、医療の現場で包装を解いた後の医薬品が、室温条件、調剤条件で不安定であったり、複数の薬剤との混合によって安定性の変化が危惧される場合では、それら特殊な条件での安定性データをメーカーの判断で自主的に用意されることになります。

ジェネリック医薬品では製剤の加速試験データのみが必要とされます。それは原薬の特徴がわかっており、先発医薬品と異なるのは製剤だけだからです。しかし、各メーカーとも長期保存試験は自主的に行っています。また医薬品によって更に使用されるにあたっての特殊な条件での安定性データを用意することも必要になると考えられます、メーカーの判断で自主的に用意されることになります。

一般的な原薬・製剤を対象とした安定性試験のポイント

試験の種類 保存条件 申請時点での最小試験期間
加速試験 40℃±2℃

75%±5%

6ヵ月
中間的試験 30℃±2℃

60%±5%

6ヵ月
長期保存試験 25℃±2℃

60%±5%

12ヵ月

加速試験において、「明確な品質変化」が認められた場合、中間的な条件の試験を追加する。