ジェネリック医薬品の品質再評価

〇経口投与される固形医薬品からの成分の溶けでる速度と生物学的同等性

試験液を4種類と複数条件にして溶け出る速度を測ることで、溶け出るという特性が極めて似通った医薬品を選び取ることが可能となり、それを目的として利用しています。ある特定の1医薬品に限定して、製剤の処方、製造方法、製造機械が固定されている条件では血中濃度との関連性を示す溶出速度は比較的容易に測定できます。その為、同一医薬品の製品間で成分の溶けでる速度をモニターし、生物学的同等性からはずれる可能性のある製品をチェックすることは可能となりました。

パドル法のポイント

50rpm

4条件のポイント

酸性、弱酸性、中性、水

異なるメーカーの複数の医薬品を対象とすることポイント

①製剤の処方、製造方法、製造機械が異なっている

②測定条件が1条件では、溶けでる速度と血中濃度推移の関連性はほとんど認められない

③複数条件で測定された溶けでる速度が全て同じ医薬品は、溶けでる特性が極めて似通った医薬品である

特定の1医薬品を対象とすることポイント

①製剤の処方、製造方法、製造機械が固定されている

②測定条件が1条件であっても、溶け出る速度と血中濃度推移の関連性が認められる可能性は高い

 

〇医薬品の品質の再評価

常に高品質の医薬品が医療に供給される為には、メーカーの工場での生産管理が重要です。基本的には各工場からは、生物学的に同等でない製品は絶対に出さない体制が必要です。製造プロセスは、ある量の原料を限定して仕込み、製品を製造し、それを繰り返します。ある量の原料をもって製造された製品であるロット内での品質の変動よりもロット間での品質の変動の方が大きくなります。その為、最終的な製品のロット毎にその品質を保証するための基準に合格しているかを試験し合格品を出荷することを行っています。単に最終製品で合格すればよいといことではなく生産システム全体を管理するという思想で製品管理が行われています。原料の搬入から最終製品の包装、出荷に至る製造過程の各ステップのシステムをモニターし、そのデータを記録し、管理することが行われています。また定期的に自治体による査察も行われています。GMP、GQPに沿ったシステムが運用されています。このGMP、GQPも先発医薬品、ジェネリック医薬品の差異なく、共通に適用されています。

GMP(Good Manufacturing Practice)「医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準」のポイント

高品質の医薬品を製造する為に必要な製造所の構造施設や製造管理及び品質管理の全般にわたって守るべき要因

GQP(Good Quality Practice)「医薬品の品質保証に関する基準」のポイント

品質保証責任者及び品質保証部門が、製造販売しようとする製品について、製造所から市場へ出荷する際の可否判定基準や手順を適切に定める等、その実施などの管理監督を通じて、出荷に責任を負うこと等を規定

 

〇再評価の目的とその方法

経口投与される固形医薬品を例にします。ジェネリック医薬品は一度生物学的同等性試験で先発医薬品と生物学的同等性を示すことが確認されています。また、その開発当時と製剤処方は変わっていませんし、製剤を作る方法、機械も変わっていません。ただし、日常的生産を繰り返す中で、先発医薬品、ジェネリック医薬品が共に少しずつ品質を変化させ、結果として医療に供給されている医薬品の中に、生物学的に同等でない医薬品になっている可能性があるという状況があります。その為1997年から厚生労働省は「品質の再評価」を開始しました。製造承認されている経口投与を目的とした固形製剤全てについて、前述の4種類の試験を用いた溶け出る速度を利用して医薬品をスクリーニングする方法が取られています。このような状況において、複数の条件全てで溶出挙動が類似した医薬品であれば、生物学的同等性を示している確率はかなり高いとして、ヒト試験を行うことなく同等であると判定することになりました。元々、生物学的同等性に近い医薬品であることを前提に、溶出挙動が類似しているというサポートデータを得たことで、最終的な同等という結論を下したというのが判断の構造です。溶出挙動の類似性のみで同等性を結論づけたわけではありません。

また、再評価の過程で、生物学的同等性という関係に影響を与えない程度の製剤処方のマイナーな変更が行われ、その医薬品が、複数の条件で先発医薬品の溶出挙動と類似した溶け出る速度を示すようになった場合には、製剤処方の一部変更後の医薬品も、先発医薬品と生物学的同等性を示している確率はかなり高いとして、ヒト試験を行うことなく同等であると判定しています。この場合も、ヒト試験で生物学的同等性は確かめられ、生物学的同等性という関係は変化させない程度にその医薬品の製剤処方の変更がなされているという前提の上に、複数の条件で先発医薬品の溶出挙動と類似した溶出速度を示しているというサポートデータを得たことで、同等という結論を下したというのが構造です。

溶出挙動が類似しない医薬品でも、製造承認を受けた試験製剤と、現在供給している医薬品の間で溶出性が変化していないとのデータを有する場合は生物学的同等性が維持されているとし合格としています。また、溶出挙動が類似しない医薬品でも、ヒトを対象とする生物学的同等性試験を行い、同等であることを改めて示した医薬品は合格とされます。

 

〇ジェネリック医薬品品質情報検討会(ブルーブック)

現在、後発医薬品の品質の信頼性向上を図り、ジェネリック医薬品品質情報検討会で、情報を集め評価し医療関係者向けに医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック)を公表しています。検討会では情報を評価した上で問題があれば、メーカーに改善の指導をしています。

資料URL